心の中の家

自閉症の子供は心の中に家を持っている。小さなコッテージかもしれないし一度入ったら迷うほどの大きな豪邸かもしれない。その家から引っ張りだそうとするのではなく、まず最初は、その心の家の中にどれだけ自分が入れてもらえるのかが勝負。

自閉症の長男が幼かった頃、よく自分に言い聞かせていた言葉です。

自閉症の子供だけでなく、人は皆、大人も子供も心の家を持っているのかもしれません。自分だけの心の家、普通に出たり入ったり、人を招いたり。自閉症児は家の中にこもってなかなか出る事が出来ない。

一人でいる事が好きなのであれば、そっとしておいてあげればいい。人はよく言います。確かにそれは本当かもしれません。自分もそう思っていた時期がありました。ただ社会の中で生きていく上で人は一人では生きていけないという事も事実です。他の人に認めてもらわなければ、自分の社会的価値を築くことも出来ません。人は皆、どこかで人に頼り、頼られて生きていたいと思うのです。

長男が幼稚園に入ったばかりの時です。彼のある一言で彼も実は一人でいるのが好きじゃない。本当は周りと繋がりたいんだ。どうやって関わって良いのかわからないのかもしれないっと気が付きました。お友達が声をかけてくれても何も言わない。見向きもしない。顔も見ない。お友達が離れていきます。ある日、帰り道で一言、”皆、僕の事が好きじゃないんだ”。 滅多に言葉を発しない息子がポロッと口にしたのです。

私は悲しくなりました。それまで、お友達を作ってほしいというのは親の私の願望で、本人がお友達と遊びたくないんだったら、それで良いと思っていたからです。自分の幸せは子供の幸せとは違う。でも、それは大きな勘違いで彼はやはり周りとつながりたかったのです。

仲間に入れてほしいんだったら声かけてくれた時に返事しようよ。無視されたら悲しくなるでしょ。何度も練習しましたが、なかなか出来ません。いざ一緒に遊ぼうよっと声をかけられると逃げてしまうのです。

長男の通った幼稚園は、PPPS (Parent Participation PreSchool)といって親が運営し、ボランティアをする形式の幼稚園でした。それを前もって知っていて入園させた訳ではありません。偶然、家から歩いていける一番近い幼稚園がPPPSだったのです。日本にそういった形の幼稚園が存在するかわかりませんが、カナダでは根強い人気があります。最初は親がボランティアなんて大変そう。という印象だったのですが、今では通わせて良かったと思っています。次男も同じ幼稚園に通わせ4年間、このPPPSのお世話になりました。PPPSについても、後日、別のブログで紹介しますね。面白いです。

PPPSのおかげで息子の幼稚園に通う親御さん達と度々交流する事が出来ました。教育熱心な方が多く長男の自閉症にとても寛大な親御さんが多かったです。自閉症に関わる仕事をしている方も多く家庭でも長男の症状について自分の子供に説明してくれる親御さんもたくさんいました。そのおかげで長男が問題行動を起こしても理解を示してくれるお友達が多かったのです。何度、感謝で涙を流したか覚えきれません。

周りが長男の違いを違和感なく受け止めてくれたのです。

現在、長男は小学5年生。彼の心の家の扉はだいぶ開くようになりました。だけど、まだまだ。これから先もっともっと何か家の中にある大きな宝物を見せてくれるような気がするのです。

さて明日も扉をノックしてみようかな。

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